1. Aは、Bが支払不能に陥った場合は、特段の合意がなくても、Bに対する敷金返還請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。
2. AがBに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合、Aは、このBに対する損害賠償請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。
3. AがBに対して商品の売買代金請求権を有しており、それが平成19年9月1日をもって時効により消滅した場合、Aは、同年9月2日に、このBに対する代金請求権を自働債権として、同年8月31日に弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。
4. AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有しており、その弁済期が平成19年8月31日に到来する場合、同年8月20日にBのAに対するこの賃料債権に対する差押があったとしても、Aは、同年8月31日に、このBに対する貸付金債権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。
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正解 4 (平成16年度)
1. 誤り。賃貸借契約に当たって、賃借人から賃貸人に差し入れられる敷金は、賃貸人が賃借人に対して取得する賃貸借契約上の一切の債権を担保する趣旨で交付される。賃貸人は、敷金をその債権に充当することができるが、賃借人から充当を主張することはできない(判例)。したがって、賃借人から敷金返還請求権と賃料債務を相殺するとの主張も許されない。
3. 誤り。不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権とする相殺は許されない(民法509条)。しかし。不法行為による損害賠償請求権を自働債権とし、不法行為債権以外の債権を受働債権とする相殺は許される(判例)。
3. 誤り。時効消滅した債権が、その消滅以前に相殺適状にあったときは、時効消滅した債権を自働債権として相殺することができる(民法508条)。本肢のAの代金請求権は、Bの賃料債権と相殺適状を生じた後に時効消滅しているのであるから、Aは、この代金請求権を自働債権として、Bの賃料債権と相殺することができる。
4. 正しい。AのBに対する貸付金債権が、BのAに対する賃料債権の差押後に取得されたものであるときは、Aはこの貸付金債権をもって賃料債権と相殺することはできない(民法511条)。しかし、AのBに対する貸付金債権が、BのAに対する賃料債権の差押前に取得されたものであるときは、両債権が相殺適状に達しさえすれば、差押後であっても相殺することができる(判例)。
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